ヤクマの塔と藻小屋
対馬の中部、峰町の海神神社の隣の海岸、木坂の御前浜にヤクマの塔と呼ばれる高さ2.5メートル、円錐形の石積みが二つありました。毎年、旧暦の6月の初午の日、団子や豆餅をお供えをして家内安全や収穫を祈願する行事だそうです。我が国の民間信仰のなかでも古くから伝承される珍しいお祭りのようです。
防波堤を挟んだ陸側には、藻小屋と呼ばれる石で作った室がいくつもあります。海から引き揚げた海藻をここに貯蔵し、肥料にしたのだそうです。ヤクマの塔も藻小屋もかつては全島にあったそうですが、今はここだけで見られる不思議な光景です。
司馬遼太郎の「壱岐・対馬のみち」によると、海神神社とここ御前浜の向こう60キロ先には巨済島の島影が見えるそうですが、その日は曇りで何も見えませんでした。