2015年01月08日

珍本コラムC前編 『吾輩ハ猫デアル』大倉書店、(明治44年初版)

今回は、『吾輩ハ猫デアル』の「縮刷袖本版」を取り上げようと思います。
「縮刷袖本版」という字面だけで珍本臭が漂ってきそうですね。
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【表紙】

装丁は文学書の装丁家として有名な橋本五葉によるものです。彼は漱石以外の作家の本でも数多く装丁を手掛けていますので、興味のある方は調べてみてください。
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 造本体裁は、ちりめん装たれ付上製本、三五版、天金(本の天に金箔を塗ったもの)、凾(はこ)付です。
「ちりめん装」とは、着物のちりめんのように和紙に細かいしわ加工を施し、強度を増したものをいいます。
触ると、ざらざらした感触です。快感です。

「たれ付」は、表紙に柔らかい資材を用い、天地、小口の三方を本文の寸法より1cmほど大きく作り、本文を包むように折り、持ち歩いても本文紙が痛まないようにしたもので、聖書や教典などに用いられることが多い製本様式・・・だそうです。
当時の製本作業は、当然手作業によるものが多いのでしょう。採算をどのように合わせていたのか、現代ではなかなか考えにくいです。というか全然わかりません。
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【天金】

大学生の頃、この本を松江の古書店「ダルマ堂」で購入しました。
「ダルマ堂」のおかみさんとお話をしていると、こんなことをおっしゃいました。

「私が嫁いで来た頃、松江城の近くの通りでは、まだ馬車が走っていた」

こういうお話しが聞けるのが、古書店の魅力です。おかみさん、おいくつなんでしょうか。
聞くのを忘れていました。

・・・次回は奥付を中心に、もう少し詳しく古書の魅力を紹介します。つづく。(縁人18号)
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2014年12月12日

珍本コラムB クラフト・エヴィング商會『ないもの、あります』筑摩書房、2009

今回は、クラフト・エヴィング商會の『ないもの、あります』を紹介いたします。

学生時代、日本文学の教授から「よく分からんけど、おもしろいよ。分からんけど」と薦められた本です。
内容はタイトルの通り、「ないもの」を、仮に「あるもの」として、紹介するものです。読み進めていくと、「ないもの」が本当にどこかにあるように思えるので不思議です。
よく分からない方に、具体的なモノを紹介します。
「思う壺」
「堪忍袋の緒」
「転ばぬ先の杖」
「先輩風」
などなど・・・
日本語の面白さを題材に生かし、どれもユーモア溢れる文章でまとめられています。

著者のクラフト・エヴィング商會とは、吉田篤弘氏と吉田浩美氏による作家兼装丁家のユニットです。中でも吉田篤弘氏による「つむじ風食堂の夜」は映画にもなったので、ご存知の方は多いのではないでしょうか。

クラフト・エヴィング商會の本は眺めるだけでも充分に楽しめます。
一旦読み始めると、季節は秋しかない、どこか遠い国の、裏通りにあって黄昏時にしかやっていない、いちど店の奥で羊の声を聞いたことはあっても店主の姿は見かけたこともない、そんな雑貨屋の勝手口のガラス戸をぎぎぎ、と開けて中を覗き込んだような気持ちになります。

よく分からない方は、クラフト・エヴィング商會の本を読んでみてください。
この本を人に紹介するようになって、教授の言葉が初めて胸に染みました。(縁人18号)
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2014年12月05日

珍本コラムA 『円周率1000000桁表』暗黒通信団、1996

今回も続けて暗黒通信団刊行の書籍をご紹介しましょう。

その名も『円周率1000000桁表』。
ただ、ただ、円周率が百万桁載っているのです。3.14・・・と続いていくのです。
それのみ。



ありそうで無いモノ・・・があるんですねえ。
さすがの暗黒通信団です。その実行力に拍手を贈らせていただきたいほどです。

気になる本体価格は、そう、314円。
Amazonでは税込み表示になるのがツラいところでしょうか。

そのAmazonサイトにおける本書のブックレビューを紹介しましょう。
「1円あたり3,030桁以上が得られるコストパフォーマンスの良さ。」
「3/14は円周率の日です。バレンタインのお返しに、この本をセレクトしました。今から反応が楽しみです。」
視点が素晴らしい。何とも暗黒通信団のファンらしいです。

本書にはまだまだ「遊び」があります。そういった「遊び」を見つけるのも、暗黒通信団の本を読む(見る)楽しみでしょう。

ところでこの本、実はかなり売れているのですよ。(縁人18号)
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2014年12月04日

珍本コラム@ 『魚臭い本』暗黒通信団、2013

【珍本コラム】と題して、世にあるオモシロい本を紹介します。

さっそくですが、標題の書籍について。
A5判で定価200円です。2013年に「暗黒通信団」から出版されました。

・・・ここで引っかかってもらっては困りますが、説明しましょう。
「暗黒通信団」とは、学術系同人サークルとも称される出版社(?)です。
「真剣にふざけている」社風で数々の名著を刊行し、一部の読者より熱狂的に支持されています。
電話に出るとき「はい、暗黒通信団です」とおっしゃるのか、気になるところです。

話がそれましたが、記念すべき第一回は、そんな暗黒通信団から発刊された『魚臭い本』を紹介いたしましょう。
コミックマーケットで販売されたものですが、内容は一切不明。
販売時に、くさや、サンマ、イカなどを網焼きにし、
いぶした煙を本にまんべんなく浴びせてお客様にお届けする、という本です。
「背」にも徹底的に臭いを染み込ませる職人の手によって、初めて完成される珠玉の一冊です。
これほど「名が体を表す」ものは聞いたことがありません。
しかも国立国会図書館にも収められている、というのが何ともシュールではありませんか。

内容には全く関心が向かないわりに、手にとってみたくなる本の稀有な例として、本書を推薦します。(縁人18号)

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2014年09月18日

明日は獺祭忌。本を片手に日本酒を飲もう。

来る9月19日は、俳人正岡子規の忌日です。
明日、ブツブツと俳句を諳んじる人を見かけたら、間違いなくその人は子規ファンです。

なぜ、子規の命日を「獺祭忌」と呼ぶのかというと、子規が自らを「獺祭書屋主人」と号したことによります。「獺」とはカワウソのことです。カワウソは巣に魚を集めて貯蔵する習性があり、魚を祭っているようなので、これを「獺祭」というそうです。中国の書物に出る文章を基に、転じて「散らかっている様」の意味となりました。
そうしたことから、子規は書斎を「獺祭書屋」と呼び(書物が散らかった部屋の意)、「獺祭書屋主人」の号を用いたといわれています。(他に高尚な意味もあるそうですが・・・)

それにしても、この「文学忌」(文学的な業績を偲ぶ日)について調べてみると、まだまだ面白いものがたくさんあります。
例えば、
司馬遼太郎の場合・・・「菜の花忌」。『菜の花の沖』という長編小説を書いており、司馬自身、黄色い花を好んでいたことにもよるそうです。
山本有三の場合・・・「一一一忌(いちいちいちき)」。小説家で、政治家も務めた山本有三の忌日は何とも変わった名称ですが、由来を聞いて納得。命日は1月11日ということで、数字の並びと有三の「三」の字にちなみ、「一一一忌」となったそうです。
このほかにも太宰治の「桜桃忌」、芥川の「河童忌」などが有名です。
文学好きは、この「文学忌」を歳時記のように扱い、手帳に書き込んでいる人も多いとか。
自分の好きな作家の「文学忌」を調べてみるのも面白いかもしれませんね。(縁人18号)
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